英語で語る易しい文化論
「Japan Through Foreign Eyes(こんなに違う!?日本のイメージ) 」
2月16日(土曜)本多公民館で「英語で語る易しい文化論」を開催。24名のご参加を頂きました。講演者は、米国出身で東京学芸大学 英語教師のジョシュア・ポール・デルさん。講演内容は、 イギリス、アメリカ、日本、それぞれの国で制作された日本と日本文化を紹介するドキュメンタリ ーの上映とそれぞれのドキュメンタリーが描く日本と日本文化について論ずる、と言うもの。特に イギリス、アメリカの作品は、外国人の目に映る日本を知る上でとても興味深いものでした。 Fish: A Japanese Obsession(魚:日本人のこだわり)と題するイギリスのドキュメンタリー では、日本と同様、四方を海で囲まれ、古代から職と食で魚との関わり深く生きてきたイギリス。 そこから日本を訪れたイギリス人漁師が目にする魚に関わる文化の違いが、驚きを持って描かれています。例えば、料理店で目にした生簀から魚を取り出し調理し、刺身として提供するメニュー。 日本人にとっては、新鮮で美味しい刺身が味わえる店なのですが、「猟」と食を分けて捉えるイギ リス人には、驚愕もの。日英「食文化」の違いなのですが、イギリス人には「殺してすぐ食べる」 残酷な行為と映るようです。
The Japanese Version(日本版)と題するアメリカのドキュメンタリーでは、作中の表現を借 りれば、「玉ねぎの皮を一枚一枚剝いていく」ように日本文化の深層に迫ろうとします。来日観光 客でも目にする大仏から始まり、日本の結婚式、満開の桜の下で騒ぐ酔客、ヨーロッパの古城を模 したようなラブホテルへと一歩一歩日本文化に肉薄しようとします。そして目にしたのは、「カウ ボーイ酒場」。幼い頃にテレビでローハイドとかボナンザなどの西部劇を見て育った中高年が、カ ウボーイの恰好で集うバー。そこに集まる同好の中高年達が口にした「西部劇に登場するカウボー イからチームワークの大切さを学んだ」と言う言葉。ここで取材記者は、米国文化が日本に受容さ れ、そして変容している事を発見します。つまり米国文化の「日本版」を見出すのです。個人主義 の米国でも殊にカウボーイは、maverick(一匹狼)として描かれていますが、日本人は、そこにも チームワークを見出したのです。
The Japanese Tradition(日本の伝統)と題する日本のドキュメンタリーは、もともと日本人 向けに制作された日本の伝統的な習慣などを揶揄するコメディ。外国人向けに日本文化を紹介する 風を装う(英語字幕付)演出で更に風刺が効いた作品となっています。その後、日本と日本文化を 端的に知る事ができる作品として外国人の間で評判を呼び、今日に至っています。たとえば、日本 の伝統として「土下座」が紹介されますが、思わず笑い(むしろ苦笑)を漏らしてしまうほど風刺 が効いた作風。誇張され過ぎの面は、あるものの外国人には、分かりやすい「日本文化紹介映画」。 それぞれのドキュメンタリーで描かれた内容や意義などは、盛り沢山。ここでは、紙幅が尽き るので要旨の紹介に止めます。さて今回の講演から、日本人自身が描く「自画像」と外から見た日 本の違いに当惑したり、違和感を覚えた参加者もいたのでは。ただ多くの参加者にとって改めて 「日本のイメージ」を考える良い機会になったと思います。
外国語部会 伴 良 一