「やさしい日本語で史跡案内」ボランティア研修に参加して

 国分寺市が誇る武蔵国分寺跡は、1922年(大正11年)に国の史跡指定を受けてから、昨年でちょうど100周年の節目を迎えました。この武蔵国分寺のことを外国人にもっとよく知ってもらいたい!できれば、日本語でわかりやすく説明できるようになりたい!・・・こんな思いに応えてくれるような「『やさしい日本語で史跡案内』ボランティア研修」が、国分寺市(人権平和課)の主催で1月に開催され、参加してみました。

 

 東京には約52万人・186の国・地域からの外国人が、そして国分寺市には約2,600人・65の国・地域からの外国人が住んでいます。そして、日本にいる外国人の6割以上が「日本語ができる」とする調査結果もあるようです。ということは、外国人と話しをする場面に遭遇したら、「こんにちは」とむしろ日本語で声をかけた方が良いきっかけになりそうで、やさしい日本語の可能性はこんなところにもあるように感じました。

 

 この研修の講師は、村田陽次さん(東京都生活スポーツ文化局都民生活部)と、髙尾戸美さん(多摩六都科学館 特別研究員・多文化共生コーディネーター)のお二人。受講生は全部で20人を超えるぐらいで、実際に「国分寺史跡ガイドボランティア」の活動をしているメンバーも多く、KIAからも4人の会員が参加しました。

 

 1月8日(日)と15日(日)の2日間はひかりプラザの会議室で、やさしい日本語についての学習と、案内する場所ごとに4つのグループに分かれて説明資料の原案作りをしました。研修ツアー本番の28日(土)には協力してくれた5人の外国人を武蔵国分寺跡に案内し、資料館を手始めに、各グループごとにすべての受講生がそれぞれのスポットで説明を行いました。

 

 

現地研修ツアー:講堂跡を前にして説明を行っている様子


 

 やさしい日本語は、<易しい×優しい>言葉として、外国人だけでなく子どもや障害を持つ人、高齢者などいろいろな人にわかりやすいよう、簡単にした日本語です。ポイントは、「はさみ」(相手の反応を見ながら、やさしい気持ちで、ゆっくりと「は」っきり、「さ」いごまで、「み」じかく言うこと)で、日本語能力試験のレベルならN3~N5(できればN4以下)を目指すことが大事だとされています。

いざ自分が説明しようとなると、あれも言いたい、これも言っておきたいとなるのですが、その思いを改めて、「はさみ」でザクザク言いたいことを刈り込んでいって、より易しく、優しく手を加えて「やさしい日本語」にしていくという感じかも知れません。

 

 参加したKIA会員のIさんからは、「日本の歴史に詳しい参加者がいて、驚きました。寒い日でしたが、参加した方が楽しいと思って下さったら、嬉しいです」との感想をいただきました。やさしい日本語の取り組みがもっと広がっていけばいなと思っています。

 

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 用意した資料はこんな感じのもの・・・ということで、現地研修ツアーのために筆者が作成したフリップと読み上げ原稿を紹介させていただきます。原稿の方は、「やさ日チェッカー」を使って言葉や言い回しを調整して、「総合判定 A とてもやさしいです」との総合判定をもらいましたが、これが正解というものではなく、あくまで例の一つに過ぎないのは言うまでもありません。

 

武蔵国分寺跡資料館内の日本地図の前での説明に使ったフリップ(右)


 

 

1. 「1300年ぐらい前」

① 今年は、2023年です。これからお話するのは、今から1300年ぐらい前の話です。

皆さんの国の1300年ぐらい前は、どんな時代だったでしょうか・・・。

② この地図を見てください。1300年ぐらい前の日本の地図です。

今いるのは、東京都の国分寺市。だいたいこの場所です。

 

2. 「奈良」

① 今の日本の首都があるのは、ここ、東京です。

その時代の日本の首都は、ここの奈良という町にありました。

奈良は、京都の近くにある町です。

奈良や京都に行ったことのある人もいると思います。

 

3. 「武蔵国」

① 今の日本は、東京都、千葉県、神奈川県など、47の場所に分かれています。

1300年ぐらい前の日本は、60ぐらいの場所に分かれていました。

今の都や県と違って、国といっていました。

日本という大きな国が、60ぐらいの小さな国に分かれていたんです。

② ここが、小さな国の一つ、武蔵国です。

今は東京都と埼玉県に分かれている場所も、同じ武蔵国でした。

 

4. 「聖武天皇」

① 1300年ぐらい前の日本でいちばん偉い人は、聖武天皇という人でした。

聖武天皇は、日本という大きな国をもっと良い国にするために、仏教のお寺を作ることにしました。

5. 「東大寺」「武蔵国分寺」

① 奈良には、東大寺という、日本でいちばん偉いお寺を作りました。

同じように、60ぐらいの小さな国にも、その国でいちばん偉いお寺を作りました。

② これを国分寺といいます。

 

武蔵国にある国分寺なので、武蔵国分寺といいます。

広報部会