今なぜ“外国人材”受入れ拡大なのか~主に欧米との比較において

第91回国際理解講座講演要旨

国分寺市国際協会

国際理解部会

 

第91回国際理解講座を2019年3月16日、本多公民館で開催しました。講師は明星大学名誉教授の渡戸一郎さん、「今なぜ“外国人材”受入れ拡大なのか~主に欧米との比較において」とういうテーマで、日本と欧米諸国の移民・外国人受入れ政策の変遷と今後の政策の方向や進めるべき取組みを中心に講演いただきました。難しいテーマでしたが、聴講者は熱心に聞き入り、理解を深めることができたと好評でした。

 

以下に、渡戸さんの講演の要旨を紹介します。

 

1.はじめに

   ここ数年、移民受け入れに関して、ヨーロッパでも米国でも逆風が吹き、昨日のニュージーランドの銃乱射事件は外国人受入れを積極的に進めているニュージーランド政府だけでなく、世界の民族や文化の多様性社会に衝撃を与えた。世界各地で移民や外国人受入れに関わる色々な問題が起こっているが、世界的に人の移動はますます活発化している。そんな中で日本は、外国人の受入れ拡大するため新たな在留資格制度を盛り込んだ改正入管法が4月から施行されることで、外国人受入れ体制が大きく変わろうとしている。最近の週刊誌にも、例えば週刊東洋経済に「移民解禁政策が日本経済の浮沈の岐路」と題した特集が出された。

   日本に在留する外国人(外国出身者及びその子ども)は年々増加しており、すでに多民族、多文化社会になっている現実がある。2018年6月現在の在留外国人は約260万人(日本総人口の2.1%)、同年10月末現在日本で働く外国人は約146万人となっている。増加する外国人労働者対策として、短期滞在型のローテーションシステムでなんとか凌いでいるが、それだけでは対応しきれなくなったので、政府は総合的対応策に着手しこの4月から色々な施策が実施される。実施は地方自治体が担うが、その中に外国人に対する日本語教室や日本語学校の質的向上が入っている。

   本日は、これまでの外国人受入れ政策やその実態を確認しながら、地域レベルで色々な出身、階層、宗教、文化の人たちがどう共生し共住するかを皆さんとともに考えて行きたい。

 

2.進む外国籍・多民族・多文化化

・2018年8月末現在の統計値によれば、在留外国人数は2,637,251人であるが、この中には、3か月未満の短期滞在者、非正規滞在者、外交官、米軍の軍人や軍属は含まれていない。

・2017年における日本で働く外国人労働者は1,278,670人で、その内訳は、①活動に制限のない身分に基づく在留資格者(永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者など)

 

が35.9%、②留学生などの資格外在留者は23.2%(留学生は、週28時間以内なら働くことができ、米国では禁止で日本は優遇されていると言える)。③専門的・技術的分野の在留資格者18.6%、④技能実習者20.2%となっている。

・技能実習者の受入れは、技能実習を通して発展途上国に日本の技術を移転するという国際協力の位置づけだが、労働環境の悪さや賃金が低いなどの理由で失踪者が多く出て問題化している。現制度で技能実習者は1号、2号、3号に区枠され、1号は技能習得段階、2号は習熟、3号は熟達した人たちで、この2号が新な制度にスライドされることになっている。

外国人が働いている業種区分は、製造業30%、サービス業16%、宿泊・飲食業13%、卸売り・小売り業13%、教育・学習支援5%などとなっている。

・日本国内での国際結婚は、年間平均3万件以上だったが最近は減少している。一つの傾向として、1970年代までは外国人の夫・日本人の妻が多く、1980年代以降は逆に日本人の夫・外国人の妻が多くなっている。

 ・外国ルーツの日本人(親の片方または両方が外国人)は1987~2017年の累計で約61万人であるが、こうした人々を含め、移民的背景をもつ人口は2040年には726万人に増加するという見方がある。また、2045年における日本への移民は日本の全人口の7~8%になると予想されている。ヨーロッパの例を見ると、移民や難民の比率が7~10%になると制度的対応が本格化しているが、日本は今回の入管法改正で、単純労働のうち能力の高い外国人労働者を真正面から受入れ、さらにその受け入れを増やしていくことが決まった。総合的対応策も動き始めるので、これをチャンスに良い方向に向かうことを期待している。

 

3.外国人・移民政策とは

・移民とは、広義には永住・定住など実質的に日本に生活の本拠を構築している定住外国人とその子孫とされている。これまで日本の在留資格の中に「移民」はないが、2016年に自民党が公表した方針「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」で定住者資格要件を定めており、その中で移民の定義が示されている。それは、「移民とは、入国の時点で永住権を有しているもので、就労目的での在留資格による受入れは移民には当たらない」としている。入国後日本で永住者資格が得られるのは、①10年以上滞在し犯罪歴がなく、生活基盤がある人、②日本人と結婚して5年以上滞在している人、③高度技能をもっている人はより短期間で得られる。

・移民には出移民と入移民がある。出移民は日本から外国へ渡る移民で、入移民は外国人が日本へ入る移民を指す。出移民としては、明治時代初期にハワイへの移民、後期に国家政策としてブラジルなどへの移民が知られている。その後1970年代まで国際協力事業団(JICAの前身)が中心となって海外派遣が行われた。1980年代に入り海外からの移民が多くなり、1990年頃に出移民と入移民が逆転し「国際人口移動転換」となった。

・ヨーロッパ移民都市における移民政策の類型例がある。< >内は対象となる移民。

 

「政策なし」<一時的現象としての移民>、②ゲストワーカー政策<一時的ゲストワーカーとしての移民>、③同化政策<定住者としての移民:そのよそ者性は消失      するだろう=移民先の文化に馴染む>、④多元主義(多文化主義)政策<定住者としての移民:そのよそ者性は維持されるべき>、⑤異文化間交流政策<定住者としての移民に対し:そのよそ者性は強調され過ぎてはならない=移民先の言葉を覚える>。現状は異文化間交流政策を取っている国が多い。

  

4.日本における外国人受入れの経緯・背景

最近の外国人受入れについての政策の動きを見ると、1982年<難民条約加入と入管法改正>、1990年<前年の入管法改正➞就労資格の整備と非正規外国人労働者の排除、及び在留資格「定住者」による日系人の導入>、1993年<技術実習制度創設>、2009年<入管法改正:入国・在留管理の法務省への一元化/外国人登録法の廃止(2012年に実施)>、2015年<日本再興戦略改訂➞経済・社会基盤の持続可能性のための外国人受け入れ>、2016年<技能実習適正化法成立>、2017年<技能実習の対象職種に「介護」追加、在留資格に「介護」新設>、2018年<「骨太の方針2018」(従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受入れていく仕組みの構築。このため真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして外国人材の受入れを拡大するための新たな在留資格を創設する)>、2019年<改正入管法施行➞在留資格「特定技能」での受入れ開始>。

 

5.ニューカマー外国人の急増―前史と、1980年代後半~1990年代  

・日本は1895年に台湾、1910年に朝鮮を植民地化し、戦前の多民族帝国下で「外地」としての台湾、朝鮮から「内地」に流入・定住化が進んだが、敗戦後のサンフランシスコ条約発効とともに旧植民地出身者は日本国籍を失った。そのような場合、欧米諸国では国籍選択権が与えられるが、日本にはなかった。

・1890年代後半から1990年にかけてアジア系の就学・留学生や女性などの若い外国人の入国が増加し、さらにバブル期の人手不足の下で、超過滞在外国人の非熟練労働分野での出稼ぎ就労(不法就労)が増加し、長時間労働、賃金未払い、労災などが多発した。

 ・この状況下、外国人労働者(特に単純労働者)の受入れについての論争「第1次受入れ論争」があった。これは、ヨーロッパでの単純労働者受入れの失敗を教訓として、専門的・技術的外国人以外の「単純労働者」は受け入れるべきでないという議論になり、単純労働者を受け入れないことが決った。このため単純労働は日系人労働者、研修・技能実習性留学生等に依存することとなった。

 

6.西欧の経験の参照―「多文化主義」から「統合」へ

・1950~1960年代、ヨーロッパでは戦後の高度成長期の国家政策として、外国人移民 労働者を受け入れた。特にドイツでは多くの若者が戦死して労働力が不足し、色々な国

 

と二国間協定を結び外国人の受入れを増やしたため、外国人労働者が急増した。

・ところが、1973、1979年の石油ショックを契機に経済が低迷したため労働力過剰と なり、外国人の受入れを停止したヨーロッパは移民問題を抱えることになった。外国人に帰国を奨励しても帰らず、人道的配慮から外国人労働者の家族呼び寄せを容認したため「ゲストワーカーの移民化(定住移民=denizen)」現象が起こった。

・1970~1980にはイギリス、オランダ、スエーデンなどを中心に「多文化主義による統合」がなされる。その中身は①denizenの存在の容認、②国籍に従属しない市民権の容認、③宗教や文化的アイデンティティの承認、④福祉国家への包摂、⑤外国人市民に参政権を付与したり、自治体にどういう政策を望むかを反映させる仕組み作ること。

・従来より血統主義を貫いてきたドイツでも、2000年代になって移民の定住化が進み、その子どもも増えてきたため移民国家の意識をもち始め、ここにきて出生地主義を導入することになり、申請すれば国籍を取れるようになった。

・多文化主義がそれぞれ個別の民族、文化、宗教、言語を保証し過ぎたために、ヨーロッパ系/非ヨーロッパ系の並行社会が生まれ、移民の間で教育や経済的地位などの格差が拡大した。このような状況から多文化主義はうまくいっていないのではないか、ということで、1990年代以降ヨーロッパ諸国の移民政策は、「多文化主義」から「統合」に移行することとなった。

 

7.翻って日本では?

・ヨーロッパでの移民受入れについての経験から、多文化主義が失敗したとして、日本は“移民の受け入れはしない方が良い”としてきた。今回の入管法改正での外国人技術者の受入れ拡大でも、一定の専門性・技能を有する外国人に限られ、受け入れる業種、人数、在留条件に制約があり、広く外国人の受入れをどうするかの対応にはなっていない。

・今回の改正入管法では、技能1号として受け入れる人数は約35万人、業種は14、在留期限は5年、家族の帯同認めていない。その後、技能1号者が一定の資格試験に合格すれば技能2号となり、在留期間を更新でき移民化が可能、家族の帯同もできる。しかし、技能2号の業種は建設、造船・船舶の2業種に限られており、それぞれ人数制限(建設4万人、造船・船舶1万3千人)がある。

・ヨーロッパでの移民政策の失敗を批判するのは簡単だが、ヨーロッパ各国は長い こと苦しんで多文化主義に辿りついた。それでも多文化主義が批判されたので、今、それを反省して国が仕組みを作って色々な施策を講じている。

 ・日本はこれまではっきりした移民政策がなく、上記のヨーロッパでのようなプロセスを学んでこなかった。そのため、「○○系日本人」とは言わず「外国人対日本人」という概念で取り組み、共生する外国人に日本の文化、習慣、言語などを習得する努力を求めた。一方で、日本に在住する外国人の文化などを日本人が学ぶ教育は、財源や時間が限られ、遅れている。

 

 

8.アジア諸国における非熟練労働者の受入れ政策 

・非熟練労働者の受入れについてのアジア諸国に共通する傾向は、受入れ期間の長期化、受入れ規模の拡大、受入れ枠の調整システムの構築などである。

・韓国を例にとると、2004年に「雇用許可制」を導入した。この制度は韓国が相手国と個別に協議して取り決める。これには非専門就業ビザの一般雇用許可制と訪問就業ビザの特別雇用許可制がある。前者の業種は製造業、農畜業、漁業、サービス業で、後者はこれらに加えて飲食店、介護、清掃業などである。

 ・2005年に一定期間韓国内に居住している19歳以上の永住資格者に参政権を付与した。2006年に外国人政策の基本方針として、「外国人の人権保障」、「国家競争力の強化」、「多文化包容と社会統合」の3原則に基づく「外国人とともに生きる開かれた社会の実現」を決め、翌年には在韓外国人処遇基本法を成立させた。

 

9.おわりに

改正入管法がこの4月より施行され、新たな外国人の受入れが始まる。今後も我が国の経済・社会基盤の持続可能性のための外国人受入れが増加し、多民族・多文化社会になっていくと思われるので、政府の総合的対応策の具体的施策とその成行きに注目していきたい。 

                      以 上